マンボウとひとことでいいますが、実はマンボウはさまざまな魚の中でもその生態がよくわかっていないなぞの魚といわれています。マンボウはその特異な容姿、生態などから大自然が造り出した創造的でユーモアあふれる生き物であると海洋学者も述べています。
ここでは、現在わかりうる学術的資料、そして生のマンボウを見た当店のこれまでの経験を踏まえてマンボウの生態の秘密を探って見たいと思います。
名前の由来;マンボウは「満方」「円魚}が由来という説。これは満、円とも円いのマンから来たというもの。いかにもマンボウの特徴をいい表している語源です。さらに「方」「魚」はマンボウの「ぼう」かが訛ったものといわれています。また「万宝」という説もあります。これはお守り袋の万宝に見た目が似ているからという説です。
さらに、マンボウには地方名の多く「浮木」(マンボウが海面に浮かぶ習性が大木が浮かんでいるように見える光景から)、「尻切」(魚体の後半が切れたような形になっている)、「雪魚」(身がイカに似て白身で軟らかいことから)というものまで探せば探すだけ見つかります。
また、学名である「モラモラ molamola」は、ラテン語によるまるい体つきから来ていて「モラ」に関していえばひき臼に当たる言葉だそうです。やはりマンボウの特徴から来ています。
英名は[SUN FISH]ですが、これは日本でいう浮木の由来と同じく、海面で横たわるその特異な姿態が日の入りに見えたからということです。
ちなみにインドネシアでは[IKAN MATAHARI]、和訳すれば太陽の魚、英名と同じ由来から来ているのでしょう。
マンボウの名前の由来が国境を越えてその特異な特徴や容姿を見事にいいあらわしているというのも、とても興味深い。
大きさ;日本の水族館などで見られるものは1メートルほどの小さなマンボウであるが、ここバリ島では最大4メートルもの大きさのマンボウを見ることができる。なお、4メートルの体長があれば、両ヒレを入れた体高は6メートルほどということになる。ちなみに世界の記録ではやはり最大が4メートルほど、そして重さはなんと3トンにも達するという。ということはバリ島で見られるマンボウは世界でも最大級のマンボウが生息し、そしてその重さは3トンのも達するということになるのであろうか。
産卵;マンボウは見た目どおりとてもおとなしくそしてのんびりとした性格だ。そのためなのか、成魚になるまでにはその鈍重な動きのおかげでほかの魚の餌となりやすい状況にもなる。そのため、マンボウはたくさんの卵を産卵する。マンボウは1回の産卵でなんと3億もの卵を産卵するそうだ。3億ですよ。日本の人口の何倍なんだろう。そしてこの3億個から成魚になるのは2−3匹だそうだ。バリ島で見ているマンボウは約1億分の1という熾烈な競争を勝ち抜いた尊いマンボウといえるのであろう。
生活環境;マンボウが普段どこで生活されているのかはいまだ謎だらけなのですが、発信機などをつけた研究観察などによって少しずつですが解明されています。普段は200メートル前後の海域で生活をし、なにかの事情(後ほど詳細は後述します)で浅瀬に揚がってくるそうです。そして水面で横たわったり、ジャンプしたりということもします。そしてまた潜降し直します。ちなみにバハマ沖で600メートルもの深海でマンボウが発見された例もあるそうです。
特異な行動;マンボウが一般の人間(漁師など)に発見できる理由は、マンボウが水面で横たわる(浮かぶ)という特異な行動をボート上から発見することができるからです。なぜ、水面で横たわるかは実はさまざまな諸説がありますが、体が弱っていて休んでいるという説や、水面に浮かび水鳥などに体表についた寄生虫などをとり除いてもらうためというちょっと想像するだけで笑ってしまうような説もあります。また水面をジャンプする理由はこの体表についた寄生虫を振り落とすためだともいわれています。実際、水中でモラモラを見ると皮膚に脂肪分のゆがみがあって、その分泌液?を求めてたくさんの小魚がマンボウを覆っています。
餌;マンボウはなにを食べているのでしょう。そのほとんどはクラゲなどの軟質性の生き物といわれています。また、マンボウは尾びれがないので泳ぎが得意でないということもあり、クラゲのような泳げない!生き物くらいしか食べられないのだろうと想像できます。ただし、稚魚のときにはクラゲがいない深海で生活しているため、プランクトンや小さな甲殻類を餌にしているのではともいわれています。
どうやって泳ぐのか;前述したようにマンボウには尾びれがありません。では、どうやって泳ぐのでしょうか?これは背ビレ、尻ビレと尾ビレが退化したビラビラした尾(舵ビレ)を補助で動かすことで進んでいます。背ビレ、尻ビレは同時にパタパタと動かし、舵ビレは方向転換などに使われているようです。ちなみにこのヒレの厚さは10センチ以上もあり、一説にはライフルの弾も通さないといわれています。また、水面で泳いでいるときに水面に突き出たマンボウの背ビレがサメのヒレに見えて驚く人もいます。
神話的魚;こんな特異な生態のマンボウですから日本やバリ島でも神がかり的な逸話に事欠きません。たとえば日本のある地域の漁師には、神からの授かった魚ととらえられていますし、このバリ島でも、乾季に到来することから、乾季は漁のシーズンでもあり、やはりたくさんの魚を引き連れてきた神の使者というような考えも一部にあると聞きました。ほかの魚とは違った興奮や感激を覚えるのは、こうした魚という垣根を越えた神秘的な雰囲気を自然にマンボウから感じてしまうからかもしれませんね。
まだまだ探せばキリのない不思議魚マンボウ、これからもチャンディダサという世界でも類をみないマンボウ観察に適した場所でマンボウを捜索、観察するでわかったことをお知らせしていきたいと思います。
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